色音変換方法の分類 (標識の体系化)


AnalogicモードとSymbolicモード

聴覚ディスプレイ(音を用いた情報提示や音を出力するシステム)については,AnalogicSymbolicとの双極軸によって俯瞰できるという見方がある(左図).

Analogicとは,とある物理現象と表現メディア(音)との間に一対一対応のような,即時的で直接的な関係のことを指す.例としてはガイガーカウンターがある.一方,Symbolicとは,混合された情報を離散的かつ恣意的な要素に表現する中で,その関係性が本来備わっていないものを指す.例としてはアラーム音や音声言語がある.もっとも,AnalogicSymbolicとの間には,厳密な境目はない.

 本研究における標識の体系化については,上記二軸を中心に据え,さらにEmotional(情動的)という視点を加える.色は音と同様にヒトの情動(感情)に大きな影響を及ぼす.当該心理は,購買行動モデル(プロセス)においても重要な役割を担っており,誘導システムにおいてもその有効性を考察することは重要だと考えるからである.

 

本研究において最も重要なコンテントであるのが,入力データ(色面)のパラメタと可聴化()のパラメタとの対応付けで(体系化)ある.予備実験においては,そのことの課題発見を目的としたものとなった.また,パラメタの対応付けは,Analogic系統,Symbolic系統,Emotional系統の3系統を主軸とした.

 本系統によって標識化されるのは情感である.

 

 


各色変換モードについて

Analogicalモード

即時的かつ直接的標識.瞬時の(反射的)可聴化が重要.「誘導」「注意」「警告」等感覚的かつ直観的な標識である.配色は,[Analogic_誘導]を「セグメント」と呼称させ,単色(単音)(図4)とした.また[Analogic_注意]及び[Analogic_警告]については「注意サイン」「警告サイン」と呼称させ,二色(二音の和音;長二度,短二度)を利用した市松のデザインとした(図5).

 

本系統によって標識化するのは,現行の誘導システム(点字ブロック)に準拠した「誘導」と「警告(或いは注意)」である.本系統の可聴化については,単音の連なり(図4)と和音の組み合わせによって対応が可能である(図5)

Symbolicモード

離散的かつ恣意的な標識.換言するならば,特徴的意味を持ったイベントに対応した標識である.反応よりも意味を重視することが重要.本標識が誘導支援の最終目的となることから「成果標識」とした[3]

 

本系統によって標識化されるのは,音声言語に代表されるような離散的かつ恣意的な,意味を持ったイベントに関わる標識である.当該可聴化においては,クロマチックチューナー等の音声解析アプリを用いる.ただし,初年度においては,現行流通しているクロマチックチューナーの精度の問題,また現行にある走査システムの性能の問題 [1]等を鑑み当該実験及び検証については次年度以降に実施予定である.

emotionalモード

情感的標識.不快,快,そして興奮の三種を用意.本可聴化については,5.13)に記載.

 

本標識については,ランディング(着地)標識[4]として,イベントへと導く役割を持たせる.すなわちSymbolic標識(イベント)の周縁標識と言える.利用法の案としては,各種イベント標識を,ポジティブ情報とネガティブ情報とに識別させる役割を持たせる等.その場合,前者に長三和音系,後者に短三和音系を割り振る.

 

本研究では,情感とは,①不快,②快,③興奮の3つの感情から形作られるものという立場から[2],先ずは,①と②の標識化を行った.可聴化については,明るい感じを持つ長三和音(ハ長調におけるⅠ度,Ⅳ度)を標識①,暗い感じを持つ短三和音(ハ長調におけるⅡ度,Ⅲ度)を標識②と規定し,図1にある写像法則に対応する配色を入力データとした(図6)



予備実験

制作された各標識については,以下の手順で検証実験を行った.

1) 色面制作

色面の大きさ,形状について,様々に展開を図った結果,単音を主とするAnalogicにおける「誘導」用においては,75×300(mm)を1セルとした大きめの色面を用いて単音が交わり難い.またAnalogicにおける「注意,警告」用においては,50×50(mm)を1セルとした小さめの色面を採用.またEmotionalにおける情動的色面については,1セルのサイズを100×300(mm)として,系統中最大とした.そのことによって,走査作業をゆったりとしたものにさせて,情感情報の感じ方をし易くさせている.

 

1) 色面の設置

 色面の設置は以下の手順で行う.

     Symbolic標識(成果標識)の設置を行う.本標識化は次年度に行うため,今回については「ポジティブ情報」と「ネガティブ情報」の票で代替した(図7).

     Emotional標識(着地標識)の設置を行う.この場合,何を成果とするかによって「長三和音系(快情報)」と「短三和音系(不快情報)」とを使い分ける(図8).

     Analogic「誘導」標識(反射標識)から上記①及び②へ分岐させるためのAnalogic「注意」標識を敷設する.

     それぞれに設定したAnalogic「注意」標識を結ぶようにしてAnalogic「誘導」標識を敷設する(図10).

     必要に応じて,Analogic「注意」標識の調整を行う.